新国立劇場2002/2003シーズン
新国立劇場 海外招待作品 Vol.2 / 国際チェーホフ演劇祭 in モスクワ
「ハムレット」
2002. 9.16.Mon.13:00 新国立劇場中劇場
ウィリアム・シェイクスピア：「ハムレット」（5幕、イヤフォンガイド付）
| スタッフ | |
| 構成・演出 | ペーター・シュタイン |
| 上演台本補 | O・ストリャローワ I・サヴェーリエフ |
| ドラマトゥルグ | クラリッサ・ストリャローワ |
| 衣裳 | ディオニセス・フォトポウロス |
| 音楽 | ラリーサ・カザコーワ |
| 振付 | ニコライ・アンドローソフ |
| キャスト | |
| ハムレット | エヴゲーニー・ミローノフ |
| ガートルート | イリーナ・クプチェンコ |
| クローディアス | アレクサンドル・フェクリストフ |
| ハムレットの父の亡霊 | オレグ・ヴァヴィーロフ |
| ポローニアス | ワレンチン・スミルニツキー |
| オフィーリア | エレーナ・ザハーロワ |
| レアティーズ | ドミートリー・シチェルビーナ |
| 旅芸人 役者1 | ウラディーミル・イエトゥシュ |
| 道化1 | |
| 墓掘り | |
刺激的な舞台でした。3時間の芝居があっという間に感じたのは、作品、演出、俳優のトライアングルが理想の形となって舞台に現れたからでしょう。こういう舞台には滅多に出会えません。
ペーター・シュタインのこの演出の舞台を実現するために、新国立劇場中劇場は前半分の座席を撤去し、普段ステージとして使われる部分、また今回のステージの横に客席を設置し、四方から舞台を観る形となりました。今回の座席は正面の最前列ど真ん中。すごい迫力でした。
俳優もロシアを代表する俳優が集められ、目の前で繰り広げられる強烈なドラマを肌で感じることができました。中でも特筆すべきはシュタインが「彼となら『ハムレット』ができる」と言ったほどの実力派エヴゲーニー・ミローノフです。チラシや宣伝などで「サックスを吹くハムレット」が話題になっていましたが、登場したときは手にマウスピースのみを持ち、時々音を出していたのですが、それがハムレットの心象になんてピッタリなんですよね。あの虚脱感と言えばいいのでしょうか…（ローゼンクランツとキルデンスターンが登場したところで「演奏開始」）。
客席中央に作られた舞台だけではなく、客席のあちらこちらでも演技をするためあちこち見渡しながらの観劇となりましたが、俳優の力量が非常に高く、決して「オーソドックス」な舞台ではないのですが、流れを自然に組み立ててあるので安心して観ることができました。ミローノフの他に特に印象に残ったのはクローディアスを演じたフェクリストフ、ガートルートのクプチェンコです。
「ハムレット」はこれまで浅利慶太のプロダクション（劇団四季）、ピーター・ブルッフのプロダクション（「ハムレットの悲劇」）を観ましたが、このペーター・シュタインのプロダクションはこれまでの記憶を遙か彼方に追いやるほど強烈な印象をもたらしてくれました。今度はぜひぜひ彼が演出したオペラを観たいですね。
ところで、今回のプロダクションは舞台が客席の中央にあり字幕の映写が難しいということでイヤフォンガイド付きとなったのですが、やはり字幕付で観たかったです。というのは、客席の壁に「電光掲示」の字幕装置を4箇所に設置すれば問題なかったのではないかと強く感じたからです。舞台が四角なら、各頂点の延長線上に字幕を配置すればよかったのではないでしょうか。字幕付だったらもっともっと俳優の演技に集中できたと思います。
新国立劇場はシェイクスピアの「リア王」（山崎努の渾身の演技！）、「マクベス」（観ていません）、「ハムレット」を上演したことになります。さて、「オセロ」はいつ舞台にかけられるのでしょうか。できればオペラの「オテロ」と連動して上演してくれたら面白かったんですけどね。
今回の公演、とても楽しむことができました。来シーズンのオープニングも海外招待作品となるのでしょうか…