東京交響楽団第501回定期演奏会〜キリストの誕生〜
「エル・ニーニョ」
2003. 3.29.Sat.18:00 サントリーホール大ホール
ジョン・アダムズ：歌劇「エル・ニーニョ」（2部・映像付き演奏会形式・字幕付・日本初演）
| スタッフ | |
| 指揮 | 秋山和慶 |
| 映像制作・演出 | ピーター・セラーズ |
| 合唱指揮 | 大谷研二 |
| 児童合唱指揮 | 長谷川久恵 |
| 混声合唱 | 東京混声合唱団 |
| 児童合唱 | 東京少年少女合唱隊 |
| 管弦楽 | 東響交響楽団 |
| キャスト | |
| ソプラノ | クリスティン・ブランデス |
| メゾ・ソプラノ | カースティ・ハームス |
| バス・バリトン | ハーバート・ペリー |
| カウンターテナー | ダニエル・ブベック |
| ブライアン・カミングス | |
| スティーブン・リッカーズ | |
2000年12月15日にパリ・シャトレ座で初演されたオペラの日本での初演奏となりました。初演で演出・映像制作を担当したピーター・セラーズが今回のプロジェクトにも参加し、一部ですが初演の出演者も参加したということで、相当初演に近い雰囲気での演奏になったのではないでしょうか。
「現代音楽」というととても難解な印象を抱いてしまいますが、このオペラではあまりそういうことを感じずにオペラを「楽しむ」ことができました。もちろん曲の中に潜む絶妙な和音などは耳に残っていますが、それがどこか心地よく残っているのは音楽だけではなくストーリーの持つ魅力でしょうか。
今回の一番の功労者は秋山指揮のオーケストラと言っていいでしょう。これまでも多数のオペラやオーケストラ・ピースを日本初演しているだけあり、こういう曲への食らいつきの良さは国内オケでもトップクラスです。歌手で一番印象に残っているのは、カウンターテナーの3人組（シアター・オブ・ヴォイセス）です。このオペラでは特定の歌手に特定の役割を与えていません。様々な役柄を曲に応じてこなしていきます。シアター・オブ・ヴォイセスの3人は様々な役柄に対し、びっくりするほど適切なアプローチで歌い上げていました（上述の初演からの出演者というのは彼らです）。その他の歌手は彼らに隠れがちになる部分もありましたが、皆、自分の役割をしっかりと果たしていました。
今回の演奏会で物足りなかったもの、それは「演出」です。今回は「映像付き演奏会形式」という形を取りましたが、この「映像つき」というのがやっかいで、場面に応じてこれでもかって程適切な映像を映し出したのですが、これだと視角と聴覚の分離がちょっと多かったかなと思いました（単に不器用なだけなんですが）。演出が入った方が映像も歌唱もより生き生きとしたと思うんですよね。ちょっと中途半端な印象を抱きました。
これをオペラとしてトータルで楽しむために、今度は舞台での完全上演を望みますが、このオペラ、日本で上演されることは…ないのでしょうね。こういうのが単なる「イベント」に終わらないようにしたいですね。