三大テノール・ラスト・コンサート・イン・ジャパン2002
2002. 6.27.Thu.19:00 横浜アリーナ
テノール（3TENORS）：
ホセ・カレーラス（JC） / プラシド・ドミンゴ（PD） / ルチアーノ・パヴァロッティ（LP）
日本人歌手（JS）：
森麻紀（ソプラノ） / 田村麻子（ソプラノ） / 郡愛子（メゾ・ソプラノ）
韓国人歌手（KS）：
ミ・ハエ・パーク（ソプラノ） / ヒュン・ジョ・チャン（メゾ・ソプラノ）
/ ヒュン・ジョ・キム（メゾ・ソプラノ）
指揮：ヤノス・アクス
管弦楽：スーパー・ワールド・オーケストラ（SWO）
| 曲目： ベルリオーズ：序曲「ローマの謝肉祭」（SWO） ガスタルドン：禁じられた音楽（JC） プッチーニ：歌劇「西部の娘」より 「やがて来る自由の日」（PD） プッチーニ：歌劇「トスカ」より 「妙なる調和」（LP） レンディーネ：ヴリア（JC） ソロサーバル：サルスエラ「港の酒場女」より 「そんなことはありえない」（PD） レオンカヴァッロ：マッティナータ（LP） メドレー・オブ・ロマンス（ラロ・シフリン編曲） ララ：ソラメンテ・ウナ・ベス（3TENORS） ディ・カプア：マリア・マリ（3TENORS） ビクシオ：マリウ、愛の言葉を（3TENORS） ディ・クルティス：泣かないお前（3TENORS） ボンファ：カーニヴァルの朝（3TENORS） （映画「黒いオルフェ」より オルフェの歌） ディ・クルティス：とても君を愛してる（3TENORS） 〜 休 憩 〜 チレア：歌劇「アルルの女」より 「フェデリコの嘆き」（JC） プッチーニ：歌劇「トスカ」より 「星は光りぬ」（PD） プッチーニ：歌劇「トゥーランドット」より 「誰も寝てはならぬ」（LP） アラウンド・ザ・ワールド・メドレー（ラロ・シフリン編曲） タリアフェッリ＆ヴァレンテ：情熱（3TENORS） ビートルズ：イエスタディ（3TENORS） ジーチンスキー：ウィーン、わが夢の町（3TENORS） ガンバルデッラ：舟人の歌（3TENORS） ヨン・ソップ：懐かしき金剛山（3TENORS＆KS） デスポジト：アネマ・エ・コーレ（3TENORS） ゲレーロ：剣に寄せる歌（3TENORS） 中村八大：遠くへ行きたい（3TENORS＆JS） 〜 アンコール 〜 ララ：グラナダ（3TENORS） アリラン（KS） ヴェルディ：歌劇「リゴレット」より 「女心の歌」（3TENORS） からたちの花（JS） ヴェルディ：歌劇「椿姫」より 「乾杯の歌」（3TENORS＆JS＆KS） オ・ソレ・ミオ（3TENORS） オ・ソレ・ミオ（3TENORS） ヴェルディ：歌劇「椿姫」より 「乾杯の歌」（3TENORS＆JS＆KS） |
ワールドカップの決勝前夜祭としては最後の「三大テノール」となる公演に行ってきました。3人のテノールの懐の深さに感嘆しました。たとえ第一線からは退きあるものの、彼らはまだまだスーパースターですね。
ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」はPAの弊害がもろに出て、退屈な演奏でした。こういうナンバーって必要なのでしょうか。まぁ遅刻者のためには必要なのかもしれませんが…
トップバッターはホセ・カレーラスです。彼お得意の「禁じられた音楽」で聴衆の心をグッと惹きつけました。歌が入るとオケのバランスの悪さ（PAが原因の大半でしょうが）も気にならなくなります。
次はプラシド・ドミンゴ。昨年6月上旬のMET来日公演以来ですが、彼は1曲目に「西部の娘」を持ってきました。このアリアを聴いただけで「来て良かった〜」と思うことができるほどの素晴らしい出来。9月にはロサンゼルスでこのオペラに出演しますが、とても格好いいディック・ジョンソンを演じるのでしょうね。
大御所ルチアーノ・パヴァロッティ。5月上旬にはMETの「トスカ」を体調不良のためにキャンセルしたのが大騒動になりました。今回も調子はどうだろうなと不安で一杯でしたが、まずその姿を見られただけで心が熱くなってきました。1曲目は因縁の(?)「トスカ」の「妙なる調和」。さすがに加齢のために声はかなり出なくなってしまい、聴いていて痛々しいところも多かったのです。とりあえず歌いきってくれてホッとしたという感じです。
ソロ曲は他に2曲ずつ。カレーラスの「ヴリア」は初めて聴きましたが、歌詞の重さがカレーラスの大病と重なり、胸に迫るものがありました。カレーラスのオペラアリアが多く聴けなかったのは残念ですが、こういうコンサートですからまぁいいかなとも思っちゃいます。今回歌われたアリア以外の曲は普通のコンサートでは滅多に聴けませんからね。「フェデリコの嘆き」はいわゆる「カレーラス節」が全面に押し出される演奏となりました。来月上旬のワシントン・オペラの「スライ」もこの調子ならいい感じになりそうです。ただし、今回の演奏からは「カレーラス絶好調！」と感じることはできなかったんですけどね。
ドミンゴは三大テノールでよく歌われている「そんなことはありえない」と「星は光りぬ」でしたが、「あなた61歳？」と思うようなすごい演奏でした。マイクを使っているので単純比較はできませんが、彼の調子はここ数年でもかなりいいコンディションのように感じました（ってそんなに多くは聴いていないんですけどね）。特に「星は光りぬ」は最近何度も何度も聴くこととなりましたが、ドミンゴ、抜群です。「オテロ」のチケットを買っていない人には、何が何でも観るように勧めたい気分ですね。
パヴァロッティはレオンカヴァッロのマッティナータ（朝の歌）も苦しそうでしたが、恒例中の恒例「誰も寝てはならぬ」はバッチリ決めました。と言っても、キーを下げてなんですが、聴いているうちにそれも気にならなくなり、最後は会場の興奮が最高潮に達しました。パヴァロッティは70歳の誕生日で歌手を引退することを表明しています。日本で彼の歌声を聴けるのは多くてもあと1回というところでしょうか（引退ツアーかな）。今回彼の歌を聴けたのはとても嬉しかったのですが、ここまで痛々しい姿を見て寂しさも増したのも事実です。ドミンゴやカレーラスと違って、今後オペラの出演も無いと思われます。醜態をさらすよりも、惜しまれながら引退できるといいですね。
3人のメドレーはこれまで歌ってきたもの、新曲など様々な曲が選ばれましたが、リハ不足の部分も散見されました。とはいえ、彼らが揃うと場が盛り上がりますね。決めるべき場所では三人とも踏ん張ってバシッと決めましたし、やっぱり別格の存在です。
「懐かしき金剛山」では韓国の歌手が、「遠くへ行きたい」では日本の歌手が共演しました。「遠くへ行きたい」は99年7月の福岡ドームでのコンサートでも聴きましたが（ドミンゴ、カレーラス、ダイアナ・ロス出演）、これと同じ編曲で、途中で「いい日旅立ち」も挿入されました（この時ダイアナ・ロスはドミンゴとカレーラスの間でほとんど歌っていなかったような…＾＾；）。国立競技場で行われた3テナで歌われた「川の流れのように」ではパヴァロッティは笑いながら全然歌っていませんでしたが、今回は本プロに入っていることもあってしっかりと歌っていました。ドミンゴの出番でフレーズが途切れたところもありましたが、まぁそれもご愛敬と言うことで。
アンコールも盛りだくさんで、オ・ソレ・ミオは恒例のパヴァロッティ対カレーラス＆ドミンゴで声を張り上げましたが、やっぱりこういうのを聴いているととても楽しくなりますね。会場にいた人もそう感じたのでしょう、1万人の観客が総立ちで盛り上がりました。
指揮はヤノス・アクス。彼は三大テノールで共演していますが、ワールドカップの決勝前夜祭の指揮者としてふさわしいかどうかは疑問です。これまではズビン・メータとジェームス・レヴァインでしたが、ネームバリューからいうと天と地の差がありますね。指揮者が強引に進めるところもあり、オケや歌手がちゃんと揃うかドキドキするところも多かったです。オケは可もなく不可もなくといったところでしょうか。
ところで、今回の公演はこれまでのワールドカップの決勝前夜祭と同列に並べてもいいんでしょうか。指揮者は無名だし（それでも上手ければ良かったのですが）、会場のキャパもたったの1万人（ローマよりは多いんですが）、曲目にも新鮮味があまり感じられず（特にソロ曲ですね）、ワールドカップの決勝前夜祭というよりも世界ツアーの一環って思いをしたのも事実です。テレビカメラの設置状況から考えても、（朝日テレビが主催に入っていますが）放送もないような気がするんですよね…
と最後はちょっと愚痴っぽくなりましたが、コンサート自体はとても楽しめました。こういう「お祭り」は楽しいですね。