NHK交響楽団特別公演
Ｎ響創立75周年/サントリーホール開場15周年記念特別演奏会

2001.10.14.Sun.15:00　サントリーホール大ホール

メンデルスゾーン：オラトリオ「エリア」作品70（日本語字幕付）

　この曲を世界で一番振っているのはサヴァリッシュだそうです。そのサヴァリッシュの迷いのないタクトの下、オーケストラ、独唱、合唱が持ちうる力を発揮し、感動的な演奏となりました。今年のＮ響の演奏会では1月の準・メルクル指揮のサントリーでの定期と並ぶか、それ以上の素晴らしさでした。

　サヴァリッシュの指揮はこれまで見てきた中で最も力強く、気迫に満ちたものでした。あのサヴァリッシュから踏み込む音が聞こえるなんて驚きです（ダニエル・オーレンの指揮だと毎回聞こえてきますが）。テンポも速めに設定しグイグイ引っ張っていきます。

　Ｎ響も素晴らしい出来でした。金管にも目立った破綻がほとんどなく、久しぶりにこのオーケストラから本来持っている力を聴けたと思います。9月の定期もこれぐらい本気でやってくれればよかったのに…

　ビックリしたのは合唱の充実度。サヴァリッシュがどのくらいリハーサルをしたのかは分かりませんが、合唱指導者の下よく練習を積んだのでしょう。大満足です。Ｎ響の第九も彼らに歌わせればいいと思うのですが。Ｎ響の第九でいつも不満に思っているのはホールと合唱ですが、少なくとも一方は解決できるような気がしてなりません。

　ソリストも皆素晴らしかったです。中でも一番素晴らしかったのはマリアーナ・リポヴシェクです。彼女は6月のバイエルン州立歌劇場「トリスタンとイゾルデ」のブランゲーネ役で観るはずだったのですが、キャンセルしてみることが出来ませんでした。もっとも、その代役は藤村実穂子だったのですが。声でドラマを作り上げることに関しては、他の歌手よりも抜きんでていました。ヤン・ヘンドリク・ロータリングも良かったです。第1部の力強さと第2部でみせる苦悩のコントラストがはっきりと見えました。ルート・ツィーザクも印象深いです。ぜひ彼女のオペラを観てみたいと思いました（もちろん他の人にもそう感じましたが）。日本人歌手陣も絶好調。ボーイ・ソプラノの3人は大舞台にもかかわらず素晴らしい声を聴かせてくれました。この時のサヴァリッシュは孫を見る優しいおじいちゃんといった感じで指揮をしていたそうです。今回のソリストの充実度はこれまでに観たコンサートの中で最高のものでした。

　そして名演の影にはサントリーホールあり！！　ＮＨＫホールでは同じ演奏をしたとしてもここまで感動することはなかったでしょう。ＮＨＫ交響楽団にはぜひぜひＮＨＫホールからの撤退をお願いしたいです。多人数を収用するのなら東京文化会館があります。サントリーホールと東京文化会館で定期演奏会をすればＮ響はますます充実するはずです。新ホールの実現は難しくても、こちらなら今すぐにでも可能だと思うのですが…

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